一年で最も憂鬱な日

タイトルは大げさだけど、僕にとって、一年で最も憂鬱な日とは、健康診断の日だ。

逆説的に言えば、特に健康上の問題も抱えずに、健康診断如きで憂鬱になれる自分は、幸せな人間と言えそうだ。

なんと言っても人生初の内視鏡検査。体験者の多くが苦い表情で語る、この検査は恐怖でしかなかった。身体に管を入れて、十二指腸まで入れ込むことは、非日常感しかない。

人間は「知らない」という状況に恐怖する。昨晩から何度かシミュレーションをしてはやめるを繰り返した。想像すると無駄に疲れるだけなので、いつしか本番よ、早くやって来いと。そういった心境にたどり着く。

そして本番が来た。

僕「初めてで怖いです」

看護師(以下、看)「まあ大丈夫ですよ」

まず胃を綺麗にする?液体を飲まされる。

僕「まずいです、、既につらいです」

看護師さんは笑う。

看護師さんに鼻から入れる麻酔を入れられる。

僕「麻酔って痛いですか?」

看「少しツーンとしますね」

僕「ツーン?怖いです」

看「入れますね?」

僕「あー」

返事の仕方を笑われる。

看「麻酔が喉に降りていくので、飲み込んでくださいね」

僕「ツーンとしました!うう、まずいです。すでにつらいです」

慣らすため?の器具を鼻に突っ込まれる。

看「すんなり入りましたね、大丈夫そうですね」

麻酔がじわじわと効いてくる。

そこに先生が登場。

僕「先生、怖いです」

先生(以下、先)「大丈夫、讃岐うどんみたいなもんだから」

僕「はあ..(讃岐うどん?)」

本番前に心構え、呼吸法、注意事項をレクチャーされた。

ざっくり言うと、呼吸が大切なんだと受け取った。

さあ、今度こそ本番だ。

ひたすら深い呼吸を繰り返す。

(うわあ、管が入ってく、怖ええ)

管が喉に差しかかると、

先「一度呑み込んでみてください」

僕「へい」

ごくり。

先「そう!上手です!初めてでこんなに上手にできる人なかなかいないんですよ!」

僕「やっぱあ(やったー)」

管はどんどん体の中に入っていく、

何とも言えず不快だが、なんとか大丈夫だ。

スーハーと音を立てながらひたすら呼吸を繰り返す。

スーハースーハー

先「もっとゆーっくり呼吸してくださいね」

僕「へい」

スーー、ハーー、スーー、ハーー

管は、胃に到達する。

先「モニター観てくださいね。綺麗ですね〜」

僕「あお、、キモいっふね」

初めて自分の胃を見た感想は、キモいだった。

よく観ると、確かにわりと綺麗だ。

こうしている間にも看護師さんは、ずっと背中を摩ってくれる。惚れてまうがな。

先「全然大丈夫ですね、すご〜く上手です」

看「全然大丈夫じゃないでスか!」

先「ちょっと流しますね〜」

洗浄のためなのか?なんなのか液体を噴射される。

ううむ、何とも言えない不快感。

先「このまま十二指腸まで行きますね〜」

僕「へい」

スーハースーハー

先「もっとゆっくり呼吸してね〜」

看「もう力抜いて、普通の呼吸にしちゃっても大丈夫ですよ」

スーー、ハーー、スーー、ハーー

うん、確かに不快ながらもわりとイケる。

がしかし、気を抜いたら、吐き気の予感を感じなくもないので、深い呼吸を繰り返す。

スーー、ハーー、スーー、ハーー

(ってか、よだれとか全然垂れてこないな。喉は麻酔効いてるけど、呑み込むこともできそう)

※体験者達も、先生も、看護師さんもよだれを垂れ流すことになるよと言っていた。

十二指腸に到達。

先「モニター観てくださいね〜綺麗ですよ〜」

僕「あお、キモいでふね」

十二指腸なんか見れるんだな、すげえなと思いながら、キモいと言いつつも、なかなか綺麗じゃんと冷静に眺めた。

先「また流しますね〜」

この液体流すの苦手だ。妙に不快なんだよな。

体の奥で液体の冷たさを感じる。

先「本当に上手ですね〜すごくスムーズですよ〜」

僕「ふぇんふぇい、まだでふか??」

わりと大丈夫だが、気を抜くと吐きそうな予感がしなくもないので、さっさと管を抜いてほしかった。

先「はい、もうすぐですよ〜」

管が体内から少しずつ出ていく。

安堵感が込み上げつつも、気を抜かず、呼吸に徹する

スーハースーハー

そして管は抜かれた。

先「はい、お疲れ様です!」

僕「終わった、、やったぞ!」

先「今日検査した方の中で一番上手でしたよ!」

僕「本当ですか?やったー!!」

看「全然余裕だったじゃないでスか!」

僕「先生と看護師さんのお陰ですよ!本当に本当にありがとうございました!!」

僕「思ったより大丈夫だったなあ、、ふぅー」

先「これで来年からは余裕だね」

僕「来年のことは、、考えたくないです..」

看「本当に上手でしたね!」

今年一番の達成感を胸に、部屋を後にした。

内視鏡検査を終えて、自信満々になった。だが、もう一つ苦手な検査である採血が後を控えていた。僕は体質的に採血されると、100%顔面蒼白になり、気分が悪くなってしまうのだ。

それを看護師さんに告げ、寝たままやってもらった。採血後、数分間は横になるつもりだったが、看護師さんはドライな表情で大丈夫でしょ?的な圧をかけてきた。その圧に負けて部屋を後にするが、気分が悪くなることはなかった。

これも内視鏡検査を終えた自信から来るものなのだろうか?とにかく良かった。

今年も身長170cm台をキープできた。毎年、加齢で身長が縮むのではないか?とハラハラするんですよ。ぶっちゃけ身長なんてどうでも良いんだけど、世の中には「自称身長170cmって言ってる人、実際170cmない説」が飛び交っているので、そう言われるのなんかイラッとするので、170cmあるとホッとするんですよね。

ということで、これから内視鏡検査を受ける方々に少しでも参考になれば幸いです。