36歳で年確された話

おつかいを頼まれた俺は、コンビニへ向かう。
今日は聖前夜で、街が浮かれてらあ。
買うものをピックアップしてレジへ向かう。

「身分証明書をお願いします」

意表を突かれた。
その発言の真意は?
それほどまでに外見が若いのか?俺(未成年は17年も前だ)。
走馬灯のように思考が駆け巡る。

男の顔は履歴書とよく言ったもんだが、人生の勝利。それ以上の敗北。酸いと甘さ。その経験値が。刻まれた小皺が。コンビニの彼に伝わらなかったことが多少なりともショックだった。

36歳 – 20歳 = 16年
36を四捨五入すると40。20歳 × 2倍 = 40歳..
などと無意味な計算を頭の中で繰り返す。

ここまで、0コンマ数秒の間の出来事である。

閉口したがる筋肉に抗うように、言葉を発した。

「え?身分証ですか..はい」

彼の目利きを大きく否定しながら見せる身分証。気まずさもひとしおだ。

身分証を見た時、彼はどんな気持ちだったのだろう?
確認すると、すぐ様クールに返却してくる。
彼から動揺は読み取れない。気丈に振る舞っていたのだろうか。

腹の中では「こいつ、こんなツラして俺より年上じゃねえか、ギャハハ」とかなんとか思っちゃってるんじゃあないのか?

この場を借りて、店員さんに一言。
わざわざ年確してきた責任感と誠実さは賞賛申し上げます。お店どころか、セブンアンドアイホールディングス社全体のことを考えての行動だったのでしょう。プロフェッショナルでした。

*

無理矢理ひねり出す相手への敬意で、一連のやりとりに蓋をするように、コンビニを後にする。

いい土産話ができた。さぁ、ディナーを楽しもう。
レッツ、ホーリーナイト。