16歳のマイメン

いつもスパーリングをやる16歳の少年がいる。彼とは毎回必ずスパーリングを行う。スパーリングパートナーならぬ、スパーリングフレンドのような関係性だ。

今日は彼とスパーリングフレンドからスパーリングマイメンへと関係性を格上げできたような会話をした。

彼は16歳ながらUFCが大好きだ。僕が「この前のヌルマゴメドフの試合観た?」と聞けば、必ず「観ました」と返してくる。

「アデサニヤ観た?」と聞けば、当然「観ました」と返してくる。聞けばUFCのために自腹でWOWOWに入っているらしい。

(俺と同じだ)

「16歳でUFCの事語り合える友達なんていないでしょ?」「いません」

(わかる。36歳の俺だっていないんだもの)

彼はUFCのスーパースター、コナー・マクレガーの大ファンらしい。1試合につき50回は観てるようで、全ての展開を記憶してしまったらしい。

(この子、狂ってるな)

落ち込んだ時は、コナー・マクレガーの試合を観るそうだ。そうすれば元気が湧いてくるんだとさ。目を輝かせて語る、ティーンの姿が眩しかった。

(思春期の青年のアイドルが、コナー・マクレガーってカッコよすぎかよ)

もちろんマクレガーの話をできる友人はいなかった彼は、ある戦略を実行した。友達にマクレガーのことを話しまくって洗脳と調教をしたそうだ。その結果、今では彼の周りにマクレガーのことを知らないやつはいないどころか、みんな好きになっちゃったらしい。

(いちいち期待を超えてくるな)

そんな彼、実はプロ格闘家を目指しているらしい。強者の巣窟UFCのバンタム級で戦いたいそうだ。

この何気ない会話の中で、僕は彼のことが人間的に好きになってしまった。明日から、僕と彼はスパーリングマイメンだ。彼がプロになった時は「ああ、彼は僕のスパーリングパートナーだよ。彼とはよくバチバチに殴りあったっけ」と自慢しようと思っている。年齢差が20歳くらいあるけど、これからも宜しくね。